1)作業手順書を作る手順
作業手順書は、表−1に示す手順を追って作成するのが基本。
作業分類表によって作成する優先順位をきめておき、この分類表から作業手順書を作る作業を選ぶ。
選んだ作業について、作業手順書(案)を作るリーダーが、設備や作業を見ながら作業を分解して手順を書き出す。この作業を進める手順に分けることを作業を分解するという。このとき、安全の急所などについても気づいたことはメモしておき、過去に起こった事故や災害についても調べておく。
次に、過去に起こった事故や災害の記録などを参考にしながら、職場のみんなで検討して作業の合理的な手順をきめ、手順ごとに「成否・安全・やりやすさ」の面と、リスクアセスメントによって大切な急所をきめる。このリスクアセスメントによって、重要な危険性又は有害性に対する対策のもれを防ぐことができる。
作業手順書は、新入社員やベテランを対象にした内容でなく、ひととおり作業に習熟した人の、知識と技能のレベルを念頭においた内容にする。ただし要素作業については、新入社員のレベルに合わせた内容にする。その他の項目についても記入して作業手順書(案)を作る。
表−1作業手順書を作る手順
No |
手順 |
留意するポイント |
1 |
単位作業を選ぶ |
・作業分類表の優先順位によって |
2 |
作業を分解する |
・作業をみながら
・過去の事故や災害の記録などを参考にして |
3 |
作業手順書(案)を作る |
・職場のみんなで
・「成否・安全・やりやすさ」の面から検討し、さらに、手順ごとにリスクアセスメントをして
・他の班の意見も聞いて |
4 |
作業手順書をきめる |
・管理者の決裁を得て |
5 |
実施に移す |
・実践するように指示して
・必要に応じて訓練をして |
6 |
作業手順書を見直す |
・事故や災害が発生したり、設備や作業方法が変わったときに
・定期的に |
交替勤務をしている場合は、作業手順書(案)について他の班の意見を聞いて、必要な修正を加える。
作業手順書(案)は、職制を通して最終的に管理者の承認を得て決定する。
決定した作業手順書は、作業者に説明し実践を指示して実施に移す。
勉強会や訓練を繰り返し行って、作業手順書通りの作業手順の定着に努める。
事故や災害が発生したときや、設備や作業方法が変わったときに、作業手順書の見直しを行うとともに、定期的にすべての職場で一斉に見直すことも大切である。
2)リスクアセスメントの評価方法
a.作業手順のリスクアセスメントに関する法律の定めなど
労働安全衛生規則第40条で、「作業手順の定め方」についても、職長教育で教えなければならないと定められている。
平成17年に改正された労働安全衛生法第28条の2により、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん、作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性などの調査をして、その結果に基づいて必要な措置を実施すること(リスクアセスメント)が、事業者の努力義務となった。
労働安全衛生規則第24条の11では、作業方法や作業手順を新規に採用し、または変更するときにも、リスクアセスメントをしなければならないと定められている。
平成18年3月10日付け基発0310001号通達「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、作業標準がない場合には、当該作業の手順を書き出した上で、それぞれの段階ごとに危険性又は有害性を特定することと示されている。
b.リスクアセスメントについて、次の事項を記録することと示されている。
@洗い出した作業
A特定した危険性又は有害性
B見積もったリスク
C設定したリスク低減措置の優先度
D実施したリスク低減措置の内容
「厚生労働省指針に対応した労働安全衛生マネジメントシステムリスクアセスメント担当者の実務」(中央労働災害防止協会平成18年刊)でも、危険性又は有害性の特定は、作業手順書のステップごとに行うことを基本とするとされている。
c.リスクアセスメントの基本的な手順
手順1 危険性または有害性の特定
手順2 リスクの見積り
手順3 リスクの低減のための優先度の設定
手順4 リスク低減措置の実施
d.評価方法のいろいろ
リスクアセスメントの評価方法は、事業場で定めたものを用いればよい。
事業場の業種や規模、安全衛生水準などを考え合わせて、事業場としての評価方法を決めておく。
リスクの見積りは、危険性又は有害性によってケガをする「可能性」と、災害が発生したときのケガや疾病の「程度」に、危険源に近づく「頻度」を加えて行う方法と、ケガが発生する「可能性」と、ケガや疾病の「程度」の2つの項目について行う方法がある。
このリスクの見積りは、数値で表す方法と記号で表す方法があり、評価の点数配分も事業場によってさまざまである。
e.リスクを見積もる判断基準
可能性、程度、頻度の、それぞれのリスクを見積もるための判断基準についても、統一されたものはないので、事業場で決めればよい。
リスクを見積もるための判断の目安を、平易な表現で示した例を表−2に示す。
表−2リスクの見積り判断基準例
|
リスクの程度 |
判断の目安 |
可能性 |
確実である |
作業基準がなくよほど注意しなければケガをする |
可能性が高い |
作業基準が守りにくく注意しなければケガをする |
可能性がある |
うっかりするとケガをするかも知れない |
ほとんどない |
特に注意しなくてもケガをすることはほとんどない |
程 度 |
致命傷 |
死亡や障害が残る災害 |
休業 |
休業4ヵ月以上のケガ(完治可能なケガ) |
不休 |
休業4日未満の災害を含む不休災害 |
微傷 |
手当て後すぐ元の作業に戻れる軽微なケガ |
頻 度 |
頻繁 |
頻繁に危険箇所に立ち入ったり手を出す |
時々 |
トラブルや修理、調整などのために立ち入る |
ほとんどない |
危険箇所に接近したり立ち入ることはほとんどない |
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