2.リスクアセスメントを取りいれた作業手順書の作成
1)リスクアセスメントとKY(危険予知)活動との違い
KY活動は予知という言葉からリスクアセスメントと混同されがちです。 KY活動の内容は作業を開始する前に、その日の作業内容・現場の状況を把握し、ヒューマンエラーの防止はもちろん、不安全行動・状態に対しての対策を立てるものです。つまり、KY活動は立てた対策を実践するための活動であり、作業開始直前に行います。
一方、リスクアセスメントは工法・機械・設備や作業管理、すなわちハード、ソフト両面から危険性又は有害性の調査を行い、その中に潜在する労働災害、事故の発生原因を洗い出し、その内容を評価し、危険性又は有害性を除去・低減させる措置を事前に導くことが目的となっています。したがって、リスクアセスメントは工事の計画が変更可能な計画作成段階で行うこととなります。
このように、KY活動が日常の安全衛生管理活動として行われているのに対して、リスクアセスメントは、作業計画や作業手順を作成するとき、あるいは類似の労働災害の再発防止対策を立てるときなどに重要な役割を果たすものです。よってその実施時期やリスク低減措置を検討するという考え方に大きな違いがあります。
2)リスクアセスメントを取り込んだ作業手順書はどのように作成するのか
作業手順書は、下の表に示すとおり「作業区分」、「手順(主なステップ)」、「危険性又は有害性」、「作業の急所」、「見積り・評価」、「除去・低減対策」、「実施者」の項目で作成されます。
・表 作業手順書の作成のポイント(省略)
3)リスクアセスメントを取り込んだ作業手順書が作成できたら
a.もう一度元請の工事計画と付き合わせる
作業手順書は、元請に提出する前に、元請の工事計画との整合性がとれているかもう一度確認することが大切です。元請が足場や揚重計画を見直していることがありますので、注意が必要です。元請の工事計画が変更されていれば、作成した作業手順書も見直しが必要です。工事現場の実状に合った作業手順書でないと使い物になりません。
b.作業員に周知する
作業手順書は、作業員に教え、そして守らせなければ意味をなしません。
作業の進展に応じて、作業手順書の重要な部分を作業員に周知しておかなければなりません。
周知の時期としては、「作業開始前」又は「送り出し教育」で行うのが良いでしょう。
また、作業員に周知するときは、
「どんな危険性又は有害性があるか(特定)」
「どの危険性又は有害性がもっとも危ないのか」
「そのために、どうしなければいけないのか(対策)」
という順序で説明すると、理解を得られやすいものです。
4)リスクアセスメントを取り込んだ作業手順書活用中に留意すべきこと
@ 作業中に災害、事故やヒヤリ・ハットなどが生じた場合は、原因となった危険性又は有害性を見極めて作業手順書を手直しする。
A 手戻りや不具合が生じたときは、何か原因かよく調べて、再発防止のため作業手順書を手直しする。
B 貸与されている機械の機種が変わるなど、作業条件や環境が変更した場合は、作業手順書を手直しする。
5)まとめ
建設業は、その特性から工事現場において潜在的危険性が多く内在しており、これらを明らかにして、実施すべき事項を決定することが重要です。
リスクアセスメントを導入することにより、現場に潜在する「 ̄危険性又は有害性」について「可能性」と「重大性」を評価して「優先度」に応じてこれを除去・低減する対策に重点的に取り組むことが容易になり、安全衛生活動のさらなる向上が期待できます。現場で多くの関係者がこの知識を身に付け、安全で快適な現場環境の確保に努めて頂きたいと思います。
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